公益財団法人鍋島報效会所蔵(佐賀県立図書館寄託)『鍋島文庫』に代表される佐賀藩関係資料の特徴は、多様な種類の日記が伝存している点だと考えます。それらは、藩主の側回りや藩政役所の業務の記録もありますが、多くは佐賀藩の上級家臣の家の日記です。
佐賀藩には、上級家臣について「三家」「親類」「親類同格」「家老」「着座」という家格がありました。そのなかで、蓮池鍋島家・鹿島鍋島家(「三家」)、白石鍋島家(「親類」)、諫早家・多久家・武雄鍋島家(「親類同格」)、神代鍋島家・深堀鍋島家(「家老」)、納富鍋島家(着座)など、さまざまな家の日記が現在まで伝存しており、佐賀藩にかんする事だけでなく、それぞれの地域の歴史に関する豊富な情報が記録されています。
しかしながら、日記の記事は家の当主の事から領地の農民の事まで非常に多様な内容であり、調査・研究に用いる際、日記の隅々まで目を通さないと、自身の関心にかかわる記事をみつけることはできません。調べたい事が特定の時期に限定されていれば、その時期のものだけを読めばいいですが、あるテーマについて時期を限らず調べたり、佐賀藩の研究を今後始めたい、そのテーマを考えるきっかけとしたい、という場合は、なかなか利用が難しいと考えます。
こうした日記資料の調査・研究利用をうながすため、日記の記事をデータベース化し、興味のある記事を簡単にみつけることができるようにしたい、と考えました。しかしデータベース化するには、日記の記事ひとつひとつを解読し、その要約を作成する必要があります。それは大変な作業です。
幸い佐賀大学附属図書館所蔵『小城鍋島文庫』(「三家」のひとつ小城鍋島家の資料)に伝存している日記には、江戸時代に編まれた記事目録である「日記目録」もあります。この「日記目録」を用いることで、記事の解読・要約作業を省略することができます(「日記目録」の解読は必要です)。
そこで平成28年度より、代表者を中心として「小城藩日記データベース」の構築作業をすすめ、令和4年3月、全記事・画像の登録が終了しました。記事総数は73980点、そのうち「小城藩日記」が伝存し、画像閲覧が可能な記事は34481件です。
本データベースにより、我々は佐賀藩・佐賀地域の歴史研究が進展する事を望んでいます。本データベースにより地域の歴史研究が進み、歴史学研究全体にも影響を与える事ができれば幸いです。
(文責・データベースプロジェクト代表者 伊藤昭弘)
本研究の実施にあたり、平成28年度・29年度大学共同利用機関法人人間文化研究機構・国立歴史民俗博物館の総合資料学奨励研究費を得たほか、同館よりさまざまなアドバイスを受けています。
日記目録の各記事には旧暦の日時が記されています。記事を時系列で並べたり、タイムライン上に可視化したりする用途にLinked Data化されたHutimeのデータセットを利用しています。
小城藩データベースは「小城藩日記」の記事目録である「日記目録」をもとに構成していますが、このたび「佐嘉御取合」「寺社方抜書」「御状方日記」(いずれも小城鍋島文庫)の記事目録を追加しました。
「佐嘉御取合」は、佐賀藩とのやりとりをまとめた史料です。記事目録には宝永2年(1705)~文政7年(1824)の記事が収録されていますが、「佐嘉御取合」は現在文化11(1814)~14年(表紙に「廿三」とあり)、文政元~8年(同「二十五」)、安政6年(1859、同「四十五」)、万延2年(文久元年、1861)1~7月(同「四十七」)、同9~12月(同「四十八」)、文久2年1~6月(以下番号なし)、同7~12月、文久3年5~12月、慶応元年(1865)、同2年の計10冊が伝存しています。表紙の漢数字は通し番号とみられ、文久元年9~12月の分までで合計48冊、その後も年1~2冊のペースで作成されたようです。この10冊のほか、記事目録(「佐嘉御取合目録」)が1冊伝存しています。しかし文政元~8年と文久元年9~12月の2冊は劣化が激しく、閲覧できない状態です。
「寺社方抜書」は、小城藩に関係する寺院・神社にかかる記録をまとめた史料です。「小城藩日記」と重なる記事が多く、「小城藩日記」から寺社関係記事を「抜書」したものと考えられます。安永5(1776)~享和4年(文化元年、1804)(表紙に「三」とあり)、文化2~5年(同「四」)、同6~12年(同「五」)、文政8~天保4年(1833)(同「七」)、天保5~7年(同「八」)、同8~12年(同「九」)、嘉永元(1848)~安政元年(1854)(同「十一」)、安政2~文久元年(同「十二」)、文久2~慶応元年(番号なし)の九冊が伝存しています。「佐嘉御取合」同様表紙の漢数字は通し番号とみられ、少なくとも十三冊が作成されたことがわかります。記事目録は、1冊ごとに冒頭に記されています。
「御状方日記」は、小城藩御状方の役人による記録です。おもに藩主の動向が記され、「小城藩日記」と比較すると、藩主にかかる書状類が詳細に写されています。「御状方日記」は、表紙に「御状方」と記された26冊(文政元~慶応元年)のほか、寛政3(1791)、8、10年の3冊も同種の記録と判断し、佐賀藩関係日記資料時系列データベースにて公開しています。記事目録は1冊にまとめられ、文政元~天保11年の記事が収録されています。
これらの史料はいずれも「小城藩日記」が残っていない時期の記録を補完したり、「小城藩日記」よりも詳しい情報が記されていたりと、小城藩研究をすすめるうえでとても貴重なものです。そのため小城藩日記データベースに、これらの史料の記事目録を追加いたしました。皆さまにさらにご活用いただければ幸いです(伊藤昭弘)。
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